核兵器発射を巡る軍事スリラー「クリムゾン・タイド」


映画界には「潜水艦ものに外れ無し」という格言(?)がある通り、潜水艦を扱う映画には致命的にダメな映画は少ない印象があります。

古くは『眼下の敵』から、『Uボート』『レッド・オクトーバを追え』『U-571』『K-19』等々。邦画でも『ローレライ』とか賛否はありますが個人的にはとても好き。

壁一枚隔てた外界は死と隣り合わせの深海という密室の中で、ソナーを頼りに見えない敵との丁々発止のやりとりと来れば盛り上がらない訳は無い。

そんな数ある潜水艦映画の中でも特に好みなのが本作。トニー・スコットが初めてデンゼル・ワシントンを起用した1995年の映画です。

以下、ネタバレ注意!

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ロシアでクーデターが起き、反乱軍が核ミサイルを手中に収めアメリカと日本を脅迫する中、アメリカは原子力潜水艦アラバマに出動を命令。

最悪の場合には核ミサイルの発射も辞さないという切迫した事態の中で、艦の指揮を執るのは数少ない実戦経験者と言われる叩き上げのラムジー大佐(ジーン・ハックマン)。

一方、新しく副長に任命されたハンター少佐(デンゼル・ワシントン)はハーバードでの在学経験もある知勇を兼ね備えた英才。

この二人の対照的なキャラ立てひとつ取っても、その後の衝突を予想させるに十分です。キャラ立てがその後の物語の道筋を明確に観客に示している好例。

艦長と副長の対面からブリーフィングで物語の前提となる状況が説明されるまでが冒頭約10分。最低限の会話で乗員のキャラ紹介をしつつ、雨のなか行われる艦長の訓示、乗艦、出撃までにさらに約10分。計20分で観客のハートをがっちりつかみにかかります。

特に雨の中の訓示のシーンは個人的にかなりのお気に入り。ハンス・ジマーの勇壮なスコアと相まってテンションの上がること上がること。

そう、本作のもう一つの見所(というか聞き所)は音楽。ハンス・ジマーはすでに『レインマン』(1988)の頃から脚光を浴びていましたが、本作や翌年の『ザ・ロック』あたりから、ロック調のシンセとオケを融合させた勇壮なアクションスコアという方法論でその後の映画音楽の流れを決定づけた感があります。

門下生や追従者も含めて猫も杓子もジマーコピーというのが90年代後半から2000年代初頭のアクション映画。俳優のセリフも効果音も押しのけて音楽が全面的に主張するというスタイルは、ジェリー・ブラッカイマー好みの派手さに見事にマッチしたんでしょう。トニー&リドリー・スコットやマイケル・ベイの映画でいわゆるジマー組は定番になっていきます。韓国映画『シュリ』の音楽がジマーそのものだったのも衝撃でした。パクリ?いやいや、すでにハリウッドのアクション映画の潮流そのものがジマー的な色に染まっていた中で、むしろその流れをしっかり取り込んでモノにしてきた貪欲さに感動しました。それに比べて邦画のガラパゴスぶりは…というのが当時の正直な感想。そのくらい、ジマー調のアクションスコアはスタンダードになっていく訳です。(邦画で言えば2005年の『亡国のイージス』がトレヴァー・ジョーンズを起用したりはありますが…)

話のそれたついでにさらに寄り道すると、ゲームの世界でも、かつては「洋ゲー」と言えばクソゲーの代名詞だったのがいつの間にか拮抗してきたように思えます。というか、世界的にはもう逆転しつつあるんじゃないかとさえ思えますが、その一因はハリウッド映画の方法論をアメリカのゲーム業界が取り込んできたことにあり、その一端をジマー的な音楽が担っているように思います。

『コール・オブ・デューティー』シリーズなんかはまさにハンス・ジマーや門下生のハリー・グレッグソン=ウィリアムズを起用しています。日本のゲームで言えば『メタルギア・ソリッド』の一作目は『スピード』を彷彿とさせたし、『メタルギア・ソリッド2』ではメインテーマをハリー・グレッグソン=ウィリアムズが作ったりで、さすがハリウッドテイストと大阪人気質のハイブリッド・小島監督という感じでしたが、どちらかといえば例外的。あ、そういえば『ファイナルファンタジーⅧ』のデモ版で、冒頭の強襲シーンの曲調が何となく『ザ・ロック』っぽかったのは何だったんだろう。製品版では別の曲に差し替わっていましたが、その辺の事情も含めて気になる気になる。

ええと何の話だったか、そうだ、『クリムゾン・タイド』。

「アラバマ」の出撃後も細かい意見の対立を見せるラムジー艦長とハンター少佐。ラムジー艦長も最初こそ「おべっかは嫌いだ」的な事をのたまって余裕をかましておりますが、ハンター少佐はおべっかどころかいちいち直言するので、両者間の緊張は次第に高まって行きます。司令室の士官達は書類の同じ場所を何度も読み返したりして気まずい空気をやり過ごすのに必死(に違いない)。

対立は核攻撃の是非を指令する通信が戦闘のどさくさで受信途中に途切れてしまったことでついに決定的なものになります。

中途半端に受信して意味をなさない指令を無視して一刻も早く核攻撃を先制するか、それともタイムリミットぎりぎりまで指令を受信し直す努力を続けるか?反乱軍がすでに降伏していたのであれば、アメリカ側からの核攻撃が第三次世界大戦を引き起こすことになり、逆に反乱が鎮圧されていなければアメリカに向けて核が発射されてしまう状況。

物語の始まりから約60分のほぼ中間地点で、副長が艦長を拘束する超展開。以後は副長が指揮を執るという不安定な状況下での戦闘、艦長側に付く士官達の反乱、ミサイル発射を阻止しようとする副長側の防戦、と事態は2転、3転。ロシア側のミサイル発射の期限が刻一刻と迫る中で、ついに一対一で向き合い静かに指令の受信を待つ二人。

この時点ですべての責任は通信担当のエンジニアが機械の故障を直せるかどうかにかかっており、「おれはカーク船長で君はスコットだ」とか副長のスタートレックネタに乗せられたばかりに全世界の命運を握る羽目になったエンジニアの心労を察すると胸が痛みます。副長、サブカルネタで振られるとつい嬉しくなってなんでも引き受けてしまいたくなるオタク心を良く理解しています。きっとこの辺は脚本をリライトしたと言われるタランティーノのせいに違いない。

結末がどうなるかは、すでに明らかです。それでも何度も繰り返し観てしまうほど、指令を受信するまでの緊張感と、受信した指令を艦長と副長が相互に確認して、艦長が最後の命令を下す際のカタルシスは素晴らしい。

ジマーのスコアに乗って歓喜が爆発する中で、一人静かに背中でガッツポーズを決める兵器担当士官のウェップスが特に涙を誘います。何しろ彼は友人である副長と艦長の板挟みになって、艦長からは銃で脅されるわ友人を裏切ることもできないわでさんざんな目に遭っていたわけで。ちなみに演じているのは、その後『ロード・オブ・ザ・リング』のアラゴルン役で大ブレイクするヴィゴ・モーテンセンであります。

全体として特殊なひねりや革新的な何かがあるわけではありませんが、娯楽職人トニー・スコットの面目躍如となる傑作だと思います。

—–余談—–

こんなCMがあったらしい…

<a href=”http://www.nicovideo.jp/watch/sm54236″ _mce_href=”http://www.nicovideo.jp/watch/sm54236″>【ニコニコ動画】長野 新幹線 CM あさま</a>

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