時代劇の傑作「切腹」


すでに1年以上放置されてるブログを立て直そうということで、しばらくは集中的に映画レビューを投下してみることにしました。

再開第一回目は時代劇の傑作「切腹」です。

以下、ネタバレ注意!

コアな映画マニアで無い人からよく言われるのが、「白黒はつまらなそう」という意見。

言いたいことはわかる。わかります。白黒=古い映画。派手さは無いし、今時の人気俳優が出演している訳でもないし(あたりまえだけど)。ブラピもジョニデもいないんじゃ、いったい何を楽しめばいいのか?ましてやそれが邦画ともなると、小津?溝口?よくわからないけど名作文学みたいなイメージでとっつきにくい…という感じでしょう。

それでも声を大にして言いたい。レンタルショップで週末の暇をつぶせるDVDを探す中で、白黒映画というだけで数多ある過去の名作群を検討の対象から外してしまうのはあまりにもったいない!

というわけで、本作は「白黒映画はつまらなそう」「邦画は洋画にくらべていまいち」と思っている向きにお勧めしたい一本です。

1962年の作品。最近は三池監督が「一命」としてリメイクしたので、それ以前と比べるとかなり一般的な知名度も向上したようですが。

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本作は、一種の法廷モノとして観ることができます。

世の中に絶望したのでお宅の軒先で切腹させてくれと現れた浪人(仲代達矢)は、「どうせ切腹する気など無く、士官を目当てにした狂言だろう」と考える井伊家の家臣にとっては武士道を見失った罪人。

一方の井伊家は、言わずと知れた徳川四天王の一角を担った家柄。エリート中のエリートであり、われこそが武士道の体現者であると自負していればなおさら、武士道のかなめである「切腹」を口実に士官をもくろむという世の中の風潮が許せないわけです。

折も折、つい先日も同じように切腹を申し出た若い侍がおり、その侍はまさに士官目当てで、切腹する気などまるで無し。結局は、井伊家に追い詰められ、不本意に切腹して果てました。

不届き者には望み通り切腹の場を与え、一罰百戒となすことこそがジャスティス。

今回も浪人が本音をさらけ出し、哀願して切腹を免れようとする無様を期待しています。

ところが、被告人が死ぬ前に一言、と語り出す供述。

それは、切腹して果てた若い侍の過去。

徐々に明らかにされる浪人の真意。

そして、武士道の守護者を自負し、他人に対しては真の武士道を説いていた井伊家の家臣達の、武士にあるまじき振る舞いが明らかにされて行くにつれ、いつの間にか、被告であるはずの浪人が、居並ぶ井伊家の面々を追い詰めているというスリリングな展開。

あざ笑っていたのは、井伊家では無く浪人の方でした。

脚本の妙による興奮を存分に味わえます。

すべてが明らかにされたのち、結局は慰めを得られなかった浪人が井伊家の家臣団と繰り広げる大立ち回りは、観客のカタルシスを十分に満たす一方で、それでも何も変わらないのだろうという悲憤が胸を打ちます。

不況の中、職を失った若い侍のたどる結末と、それを止められず、欺瞞に満ちたエリートに一矢報いようとした浪人の悲憤は、今の時代の若い世代こそ共感を持って観られるのでは無いかと思います。

—–余談—–

  • 若い頃の丹波哲郎のかっこよさは異常。僕の世代(30代)にとっては「大霊界」とかの変な人的なおじいさんのイメージが強いですが、60年代~70年代の丹波哲郎はきりっとした精悍な顔立ちがとにかくかっこいいです。
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